マイクロ波帯における電波吸収体の解析
Abstract
電磁波解析ソフトKeyFDTDを使用してマイクロ波帯の電波吸収体を解析した。電波吸収体は電波暗室の壁面などに設置され、電磁波を熱に変換することで反射を抑制する。単層、複層にしたシート状やピラミッド状の形状が一般的で、主にフェライトやカーボン、ウレタンが材料に用いられる。シート状と比較して広帯域に良好な吸収特性を持つピラミッド状の電波吸収体を取り上げ、電波吸収体の高さを変えて反射率スペクトルを導出、吸収体の高さによる吸収性能の違いを調査した。
1. 解析概要
電波無響室等で使用される電波吸収体は入射した電磁波を熱に変換することで、電磁波の反射・透過を抑制する。電波吸収体は、シート状やピラミッド状の形状が一般的に使用され、周波数によりフェライトやウレタン、カーボン等が材料に用いられる。本レポートでは、マイクロ波帯における電波吸収体をFDTD法によりシミュレートした結果を報告する。
2. 解析条件
電波吸収体の概形をFig1に示す。シミュレーション対象は、完全導体の金属板上に配置された中空のピラミッド型の電波吸収体とした。電波吸収体の四角錐部分の中空、電波吸収材料の比率を維持したままTable1のように変更し、高さによる反射スペクトルの変化を調査した。電波吸収体の物性値をFig2に示す。電波吸収体の形状、及び物性は文献[1]、[2]を参考にした。Table2の解析条件で、電磁波解析ソフトKeyFDTDTRで解析した。反射スペクトルは、ガウシアンパルスの入射波形と反射波形のフーリエ変換後のパワー比から導出した。
Fig.1 Simulation model
Case | (a) | (b) | (c) | (d) |
---|---|---|---|---|
50 | 80 | 100 | 150 | |
25 | 40 | 50 | 75 |
Excitation wave | |
---|---|
Boundary condition | |
Computational domain | |
Mesh size | |
Timestep |
3. 解析結果
電波吸収体の高さ毎の反射スペクトルをFig3に示す。高さ50mmでは反射率は最大-5dB程度だが、高さ150mmで最大-23dBと吸収体を高くすることで反射率は大きく低減した。これは高さの上昇に伴い吸収体の突端が鋭角になったため、空間から電波吸収体へ入射する際にインピーダンスの変化が緩やかになったことが影響している。
Fig.3 Simulated normalized reflectance spectra
4. まとめ
電磁波解析ソフトKeyFDTDを用いてマイクロ波帯における電波吸収体の反射スペクトルを導出した。電波吸収体の高さに比例して吸収性能が向上する結果が得られた。
[1] 尾前宏ほか., “シラスバルーンを用いた複合フェライト電波吸収体の開発”,鹿児島県工業技術センター研究成果発表会予稿集,2002
[2] 上薗剛ほか., “シラスバルーンを用いた複合フェライト電波吸収体の開発”,鹿児島県工業技術センター研究報告,2001
お問い合わせ・資料ダウンロード・入門動画視聴のお申し込みはこちら
お問合せフォームを開く