蒸留水と電解液のマルチモード加熱
Abstract
電磁波解析ソフトKeyFDTDを使用して蒸留水とNaCl水溶液のマルチモード加熱をシミュレートした。水のマイクロ波帯における物性はDebye型の分散を示す。一方、電解液のNaCl水溶液はDebye型の分散に加えある周波数以下で導電性があるため、DebyeモデルとDrudeモデルによって近似する。2.45[GHz]と5.8[GHz]で蒸留水と電解液をマルチモード加熱し、SAR(Specifications Absorption Rate)の分布を比較した。
Multi-mode heating of distilled water and aqueous NaCl solution was simulated using the electromagnetic wave analysis software KeyFDTD. The microwave properties of water show a Debye type dispersion. On the other hand, the NaCl solution of the electrolyte has a conductivity below a certain frequency, in addition to the Debye type dispersion, which can be approximated by the Debye and Drude models. Multimode heating of distilled water and electrolyte at 2.45 [GHz] and 5.8 [GHz] was used to compare the distribution of SAR (Specifications Absorption Rate).
1. 解析概要
蒸留水はマイクロ波帯においてDebye型の分散を示す誘電体である。蒸留水に電解質のNaClを溶解したNaCl水溶液は、Debye型の分散に加え、ある周波数以下で高い導電性を示す。本レポートでは、0.6[mol/L] NaCl水溶液と蒸留水のマルチモード加熱を複数周波数でシミュレートした結果を報告する。
2. 解析条件
Fig.1にシミュレーションモデルを示す。モデルは周波数によって導波管及び励振源をWR-159、WR-430の寸法に変更した。蒸留水または電解液はビーカー()に入っている。蒸留水の複素誘電率は2.45[GHz]で、5.8[GHz]でとした。電解液の複素誘電率はDebyeモデルとDrudeモデル(eq.1)で近似した。
分散パラメータは、、、、とした。Table.1の解析条件で、電磁波解析ソフトKeyFDTDTRを用いて蒸留水と電解液のマルチモード加熱をシミュレートし、1波長積算したSAR分布を導出した。
Incident wave | |
---|---|
Boundary condition | |
Computational domain | |
Mesh size | |
Timestep |
3. 解析結果
Fig.2、3に液体中心断面におけるxz平面、xy平面のSAR分布を示す。液体部を黒線で囲って示した。Fig.2が2.45[GHz]、Fig.3が5.8[GHz]、(a)が蒸留水、(b)が電解液の解析結果である。2.45[GHz]では、蒸留水は中心部、電解液は外縁部で吸収率が高い。5.8[GHz]ではどちらも外縁部で吸収率が高い。蒸留水と電解液のSAR分布変化の差は電解液中のイオンによる導電性に起因すると考えられる。各xz平面のSAR最大値は、蒸留水では2.45[GHz]が1.69×105[W/m3]、5.8[GHz]が2.57×105[W/m3]、電解液では2.45[GHz]が1.99×105[W/m3]、5.8[GHz]が2.80×105[W/m3]であった。電解質を加えることによって同じ周波数でも局所的な吸収率が増大する傾向が得られた。
Fig.2 SAR distribution (2.45GHz)
Fig.3 SAR distribution (5.8GHz)
4. まとめ
電磁波解析ソフト KeyFDTDTRを用いて蒸留水と電解液のマルチモード加熱をシミュレートした。本解析結果から電解液は周波数によって伝導性の有無が生じること、蒸留水と比較して局所的な比吸収率の増大することを確認できた。
お問い合わせ・資料ダウンロード・入門動画視聴のお申し込みはこちら
お問合せフォームを開く