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構造色のメカニズムと電磁波解析の事例

構造色のメカニズムと電磁波解析の事例

このページでは構造色についてそのメカニズムを解説し、電磁波解析ソフトKeyFDTDを用いてモルフォチョウとモスアイについて構造色を数値解析或いはシミュレーションした例を紹介します。

構造色を持つ動物たち、オオゴマダラ、インドクジャク、カワセミ、モルフォチョウ、オウムガイ
構造色を持つ動物たち、オオゴマダラ、インドクジャク、カワセミ、モルフォチョウ、オウムガイ

構造色とは何か?

「構造色は、光の波長あるいはそれ以下の微細構造による、分光に由来する発色現象を指す」(Wikipedia)

可視光の波長は一般的に350nm~820nmです。これと比較し微細構造は100nm程度~数μmの大きさを持ちます。特定の波長が反射され構造色が発現するためには、形状や構造の繰り返し、屈折率の組み合わせなどの条件が揃うことが必要です。身近な例では石鹸の泡やCD-ROMの裏面で構造色が見られます。(後述のオウムガイの構造に類似)

構造色が発現する仕組みには何種類かあります。例えば、オウムガイの場合、薄い多層膜の各層から出る反射光が干渉して構造色が発現します。カワセミや、モルフォチョウクジャクの場合、翅の鱗粉や羽の微細構造の3次元周期構造により構造色が発現します。一方、光を反射せず「黒く」見える蛾の目(moth-eye)は表面に鋭い円錐形の構造が並び全ての波長の光を反射しない「構造色」です。多くの色素は紫外線を吸収し退色する一方、構造色は光を反射して発色するため構造が崩れない限り退色しません。

解析事例 モルフォチョウの構造色

モルフォチョウの鱗粉には表面に襞が付いた規則的な溝(3次元周期構造)が存在します。この構造の溝の間隔を変化させたとき光の反射スペクトルの変化を電磁波解析によってシミュレーションしました。

1)解析モデルと解析結果

鱗粉の解析モデルを図1に示します。鱗粉の1層の溝幅は、0.1、0.125、0.15,0.175[μm] としました。
数値シミュレーションの結果、各鱗粉の溝幅と反射光波長により現れる色彩で構造色を示しました。

モルフォチョウの解析モデル図 図1 鱗粉の解析モデルシミュレーション結果 図2 解析結果-各鱗粉溝幅と、反射光波長、構造色の関係
周波数と色の関係
解析モデルと結果、波長と色彩の相関図

2)結果のまとめ

解析結果とモルフォチョウの蝶翅色の関係を以下にまとめます。但し、ここでは反射率が卓越する周波数の色が色彩として反映するものとします。鱗粉の溝構造の間隔が狭いほど短波長側(青)に見えて、間隔が広くなると波長の長い緑→黄色に変化することが端的に示されました。

■青いモルフォチョウ

シミュレーション結果-

解析条件と結果 鱗粉の溝構造の間隔を0.1 μmにした場合

青色のモルフォチョウ

実物の青いモルフォチョウ「レテノールモルフォ(フレンチギアナ)」

■緑色のモルフォチョウ

シミュレーション結果-緑

解析条件と結果 鱗粉の溝構造の間隔を0.125 μmとした場合

実物の緑色のモルフォチョウ「メネラウスモルフォ♂(ブラジル)」

■黄橙色のモルフォチョウ

シミュレーション結果-黄色

解析条件と結果 鱗粉の溝構造の間隔を0.2 μmとした場合

橙色のモルホチョウ

実物の黄橙色のモルフォチョウ「カキカモルフォ♀(ペルー中部)」

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解析事例 モスアイ構造

ユウマダラエダシャク

ユウマダラエダシャク

モスアイ(蛾の目)

モスアイ(Moth Eye)とは、「蛾の目」のことです。蛾の目には微細な凹凸があり反射を防ぐ効果がありこの構造は「モスアイ構造」と呼ばれます。モスアイ構造をガラスの表面に付与すると構造が可視光の波長より小さいため、表面で空気とガラスの比率が連続して変化するように振る舞い、屈折率の変化を緩やかにします。

太陽光電池では、平滑なシリコン基盤に太陽光を直接入射してもほぼ反射してしまいエネルギー効率を向上させることが出来ません。反射を少なくするためのモスアイ構造の活用が期待されています。

解析の概要

シリコン上に加工されたモスアイ構造により可視光がどのように反射、透過するかを弊社開発の電磁波解析ソフトKeyFDTDを使って数値シミュレーションしました。特にモスアイ構造の高さによる影響に注目しました。

蛾の目は6角形の複眼で表面が微細な円錐が整列した構造をしています。その底面の直径は300[nm]程度で高さは200nm〜250nmです。そこで解析領域を、200×200×3000[nm]とし、厚み900[nm]のシリコンに高さ100、300、600[nm]の円錐体を加えた表面形状と、構造がない表面に、波長350~750[nm]の平面波が垂直入射する条件で解析しました。解析モデルを図3に示します。

モスアイモデル

図3 モスアイ構造

解析結果

数値解析結果から、モスアイ構造の高さhが高くなることで、「広帯域の波長(可視光)に対して、外部にへの反射光を限りなく0に減らせる」ことが分かりました。特に、h=600[nm]における構造を作成した場合、反射率は2%以下となり、この結果は実験値と同様の結果が得られました。

モスアイテーブル
モスアイ結果

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構造色の応用例

構造色の産業応用に岐阜県産業技術総合センターが報告している金属表面の加飾加工が挙げられます[1]。金属に直接加工するため耐久性に優れるほか、着色料や作業工程に科学物質を用いないため環境負荷が少ないといったメリットがあります。ステンレス鋼表面にレーザーで複数の酸化膜を形成し、構造色を用いて様々な色を加飾しています。

岐阜県産業技術総合センターによる構造色の応用例[1]:ステンレスの表面に複数の酸化膜で微細構造を形成し、様々な色を表現しています。

参考文献
モルフォチョウの構造色の解析 株式会社科学技術研究所 藤田明希ブログ
Moth-Eye構造の可視光反射抑制効果のFDTD解析によるシミュレーション
Moth-Eye構造(PDF)
かぎけん昆虫図鑑

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