睡蓮とハスの違い
睡蓮とハスは水中に根を持ち、葉と花を水上に咲かせる特徴は同じですが、種としては全くの別種です。ハスはヤマモガシ目ハス科ハス属であるのに対し睡蓮はスイレン目スイレン科スイレン属に分類されて目の段階から異なります。
性質もいくつか違っていて、睡蓮の葉には切込みが入ることがほとんどで、葉が水面から立ち上がることはないですが、蓮の葉には切込みがなく、葉が水面から立ち上がる場合があります。花を見るとスイレンは雄蕊雌蕊が目立ち花詫はありませんが、蓮は「仏の台」に例えられる花詫が花の段階から目立ち花が終わって実として完熟すると大きく育ちます。そして何よりスイレンはレンコンを作らずワサビ(温帯種)や里芋(熱帯種)のような塊根が出来ます。これらの塊根は残念ながら食用にはなりません。
睡蓮の魅力
その美しい花がスイレンは食用にならない残念な点を補ってあまりあります。「花より団子」と言い慣わしますがスイレンは「団子より花」。日本に自生するのはヒツジグサのみで観賞用に流通しているのは作出された温帯種または熱帯種です。温帯種は日本の温かい地域では越冬できますが熱帯種は自然越冬できないため休眠状態の塊根を掘り上げ、暖かい室内で保存します。
熱帯種を日本で経年栽培するのはなかなか大変ですが、花の魅力はその苦労を忘れさせてくれるのでしょう。大変さゆえに日本では温帯種、熱帯種両方が流通しますが、種類のバリエーションは熱帯種の方が多いようです。この理由は後述。また熱帯種は温帯種にはない芳香がある点もその魅力を増しています。
熱帯スイレンの作出はアメリカと東南アジアが多い
日本の作出は温帯スイレンがほとんどですが、世界的に見ると睡蓮の作出はアメリカ(温帯/熱帯)と東南アジア(熱帯)が多いようです。作出された品種には作出した国の言葉で命名されることが多くアメリカで作出されたものではブルズアイ、ムーンビーム、ヒラリーなどの名前がついています。一方、タイで作出されたものはマエプロイ、ナンクワック、チョーラープなどの名前がついています。英語はともかくタイ語の意味を調べるのはなかなか大変です。
小型種をビオトープに使うのも人気
ビオトープとは複数の生物を一つの環境で栽培・飼育して生物群集の生息空間を再現する園芸手法ですが、睡蓮の場合積極的にこの手法が取り入れられます。特に害虫になりやすいボウフラを駆除する意味でメダカを睡蓮の池や鉢に導入するのは定番です。このサイトの写真は熱川バナナワニ園のスイレン池で取材したものがほとんどですがこの池にもたくさんのメダカが泳いでいました。