H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗に思う
残念です。昨日3月7日、打ち上げ中止ー延期されて、再打ち上げされたH3ロケットは2段目エンジンが着火しなかったことで軌道到達の見込みがなくなり爆破処理され失敗に終わりました。
打ち上げ中止時に「変な形」で注目を集めながらも3月7日までに初回中止に至った原因を特定し修正、再打ち上げまでたどり着いた技術者の皆さんの能力と努力は評価すべきと思います。またH3ロケットの1段目エンジンであるLE9エンジンの動作は問題がなかった点も今回の打ち上げ(ミッションとしては失敗に終わりましたが)で得られた技術的達成です。
とはいえ「失敗」という結果に対して世論は厳しそうです。ですが、科学技術部長は「正当な失敗に対しては寛容でなければならない」と考えます。「正当な」というのは手抜きや明確な能力不足が原因ではなく、また成算が見込める挑戦において発生したという意味です。今回のH3ロケット打ち上げ失敗は間違いなく「正当」であったと思います。
何故、寛容でなければならないのか。失敗への不寛容は、挑戦への意欲を挫き、失敗への過剰な忌避感を生じ、事実の隠ぺいや改竄の原因となります。過去の日本の各企業・研究所における、失敗の隠ぺいや改竄という不祥事の根本的な原因は「正当な失敗への不寛容」にあると思います。
また近年インターネットの普及で匿名性の高い発言が多数に公開できるようになり、人々の「失敗」に対する非難はより厳しくなっているように見えます。失敗の経験すらない人の発言や記事で他人の失敗を評論、評価しその内容が嘲笑や侮蔑であると感じさせるものも多くあります。失敗すら出来ない社会であってはならないし、失敗すらしたことの無い人が他人の失敗を論難することも不当だと思います。
今回の失敗は残念ですが、失敗を糧として成功に導いてくれるであろう日本の宇宙関連技術者を心から応援します。