内閣総理大臣 北条氏康(1話 プロローグ)

ある晩、あるおでん屋の会話

週末のまだ9時過ぎの早い時間なのに、最後のお客さんがお勘定を済ませてお帰りになる。店主のヒロシさんが
「ありがとうございました、また是非っ!」
とお声がけ。お客さんが戸を出た瞬間
「ったく、もう今日は終わりかなー。ミカさん10時で上がりにしようか。」
終了宣言。
「はい、いいですか」
「あ、ホワイトボードにバンネギって書いといてくんない?
バンネギ、万能ねぎのことだけどこのホワイトボードに私が書く文字のほとんどは「バンネギ」。なんでいつもなんだろうと思いつつ、「バンネギ」を書き込む後ろから
「首相候補って言われてる北条氏康って、うちに来てくれるウジヤッさんだよね」
ヒロシさんが聞く。
「そうだと思います、というかそうですよね。」
「そうなんだけど、ウチで飲んでくれてるときの雰囲気とテレビに写ってるときの雰囲気が違いすぎない?」
「それだけ店では寛いでくださっているということで良いんじゃないんですか。」
「なんか、いつもご機嫌で酒飲みながら聞き上手なところしか見てないから、あんな厳しい表情するのか?とか思うよね。」
たしかに「ウジヤスさん」の印象はそんな感じだ。
「でもさ、総理大臣が常連さんとかだとうちの店の格も上がるよね。有名人がいっぱいくるようになったりして…」
と希望的観測?取らぬ狸?のような独り言。
「隠れ家的なっていつもも言ってるからそんなことにはならないんじゃないですかね。」
と少し水を掛けるように話すと、
「まあ、そうだよね、でも総理大臣だよ、すごくない?」
「すごいです」
と答えて、時計を見ると上がりの時間だ。気分を変えたヒロシさんが
「じゃ、あがろうか。今日のまかないは…」
いつもこの店のまかないは最高。まかないを気にしながら、内心「総理大臣はやっぱりすごい」と思う。

内閣総理大臣 北条氏康(第1回指名投票)に続く

この物語はもちろんフィクションです