売り言葉に買い言葉?🙃万葉集草木シリーズ95.真菰
マコモ(真菰、学名:Zizania latifolia)は、中国原産で、イネ科マコモ属の大型の宿根性多年生の水生草本です。日本では北海道〜九州の湖沼や、河川、溜池等の水辺に群生します。雌雄同株。春(旧暦2月)に伸びる匍匐枝(新芽)は土中を伸びるために先が角のように硬く尖っています。葉は幅広で細長く、内部がウエファスのように空気層となっています。夏〜秋に、細長い茎先から伸びた円錐花序の先端に広線形で黄緑色の雌性の小穂を、その下に薄赤紫色の雄性小穂を咲かせます。夏に刈り取って(真菰刈、まこもかり)よく乾燥させてシメナワ(〆縄)や、コモ(菰)、ムシロ(筵)、スダレ(簀)を作るのに利用されます。
黒穂菌が寄生して肥大化した新芽はマコモタケ(菰筍)と呼ばれ食用とされます。食用の他、葉でコモ(菰)を作ったり、黒い胞子は「真菰墨」と言い、お歯黒や鎌倉彫の顔料に使われます。和名は、丈夫で軽い葉を編んでコモ(菰)を作ったことが和名の由来です。
万葉集とマコモ
万葉集では「コモ」と呼ばれ、17首程詠われています。その内の1首をご紹介します。
第16巻 3843番歌
作者:穂積朝臣(ほづみのあそみ)、穂積老人
題詞:穂積朝臣和歌一首
登場する植物:マコモ
あらすじ:先の3842番歌で平群朝臣(へぐりのあそみ)が穂積朝臣の「腋毛」をからかったので、次の3843番歌(ここ)で穂積朝臣が平群朝臣の「赤鼻」をからかい返した歌。売り言葉に買い言葉的な歌が万葉集にもあるんですね。
原文
何所曽 真朱穿岳 薦疊 平群乃阿曽我 鼻上乎穿礼
訓読
何所(何処に、いづくに)曽(ぞ) 真朱(ます)穿(掘る)岳(丘) 薦疊(こもたたみ) 平群乃(の)阿曽(あそ)我(が) 鼻(の)上乎(を)穿礼(掘れ)
↓
いづくにぞ 真朱(まそ)掘る丘 薦畳(こもたたみ) 平群(へぐり)の朝臣(あそ)が 鼻の上を掘れ
意味
何処にあるのか 朱を掘る丘は 薦畳(こもたたみ)のような 平群(へぐり)の朝臣の 鼻の上を掘れ。
注記
真朱(ます、まそ、しんしゅ):硫化水銀鉱物から取り出される濃黒色の赤色。
薦畳(こもたたみ):マコモ(薦、こも)で編んで作った畳。幾重(へ)にも重ねて編むの意で、「平(へ)群」に掛かる枕詞。
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