セリ(芹、学名:Oenanthe javanica )とは、日本原産でセリ科セリ属の湿地性多年草です。日本原産とは言え、種小名に「javanica」とあり「ジャワ島の」が基準標本なので、史前帰化植物かもしれません。日本全国の田んぼや畦道などに自生し、生える場所により、ミズゼリ(水芹)、タゼリ(田芹)、オカゼリ(丘芹)と呼ばれます。
葉茎を葉野菜の食用に使いますが、古代中国では食用の他、婦人病の薬用とされました。
開花は夏ですが、春の若い茎葉を野菜とするので春の七草の一つとされます。
草丈は30〜60cmで、地下茎で横に這います。茎には稜があります。葉は薄緑色で葉質は柔らかく独特の匂いがあります。葉は2回羽状複葉で小葉は菱卵形をしています。
7〜8月に、花茎先端から傘状花序を伸ばし、極く小さな白い五弁花を咲かせます。地下茎で生えるためセリは狭い場所に密集して生え、その様子を「せり合う」と表現し、「セリ」の名前がついたとされますが、定かではありません。
セリは無毒ですが、猛毒のドクゼリ(毒芹、学名:Cicuta virosa)と似ているので要注意です。
万葉時代は
七草粥の風習は平安時代以降で、万葉時代には「春の七草」の習慣はなく、食べられていたのは、セリ(芹)、リだけでした。
■万葉集とセリ1
万葉集でセリは、贈歌とその返歌の2歌で詠われています。これは贈歌です。
セリ1 万葉集 第20巻 4455番歌
作者:橘諸兄(葛城王、かずらきのおおきみ)
登場する植物:セリ
セリ1 原文
安可祢左須 比流波多々婢弖 奴婆多麻乃 欲流乃伊刀末仁 都賣流芹子許礼
読1
安可祢(あかね、茜)左須(さす、射す) 比流(昼)波(は)多々婢(田賜び)弖(て) 奴婆多麻(ぬばたま)乃(の) 欲流(夜)乃(の)伊刀末(いとま)仁(に) 都賣流(摘める)芹(芹)子許礼(これ)
↓
茜(あかね)指す(さす) 昼(ひる)は(田賜び=班田使として田を配分する仕事)(たたび)て 射干玉(ぬばたま)の 夜(よる)の
セリ1 意味
昼は班田使として田を配分する仕事をし 夜に時間を見つけて 摘んだつんだのだよ、この芹子(せり)は。
■万葉集とセリ2
万葉集とセリ1では贈歌が詠われましたが、これはそれに対する返歌です。
セリ2 万葉集 第20巻 4456番歌
作者:薩妙觀命婦(さつのみょうかんみょうぶ)
題詞:天平元年班田之時使葛城王従山背國薩妙觀命婦報贈歌一首
(薩妙觀命婦が前歌に報えて贈ってきた歌:万葉集 第20巻 4455番歌への返歌)
セリ2 原文
麻須良乎等 於毛敝流母能乎 多知波吉弖 可尓波乃多為尓 世理曽都美家流
セリ2 読
麻須良乎(大夫)等(と) 於毛敝流(思へる)母能乎(ものを) 多知(太刀)波吉弖(佩きて) 可尓波乃(の)多為(田居)尓(に) 世理(芹)曽(ぞ)都美(摘み)家流(ける)
↓
大夫(ますらお)と 思へるものを 太刀佩きて 可尓波(かには)の田居に 芹ぞ摘みける
セリ2 意味
立派な方と 思われているのに 太刀を腰にさして 可尓波(かには)の田んぼで 芹子(せり)なんか摘んでらしたのね。
可尓波とは京都府木津川市内にあった地名。
一般名:セリ(芹)、学名:Oenanthe javanica 、分類名:植物界被子植物真正双子葉類セリ目セリ科セリ属 、別名:シロネグサ(白根草)、Japanese parsley、Chinese celery、生息分布:日本全国、環境:水田、畦道、田んぼ 、 生活型:湿地性多年草、草丈:30〜60cm 草姿:横に這う、茎形:稜がある、葉色:薄緑、葉質:柔らかい、小葉形:菱形、葉形:2回羽状複葉、小葉形:卵形、葉縁:決刻有、開花期:7〜8月、花序形:傘状花序/複散形花序、小花形:極小の五弁花、小花色:白、雄蕊数:5、用途:葉茎を野菜に 、特徴:独特の香り、食用。
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